書評 「やりがいのある仕事」という幻想
作家である森博嗣が「近い将来の働き方」を論じている。森博嗣は『すべてがFにな
る』でデビューし、アニメ化もされた『スカイ・クロラ』シリーズ、剣豪小説『ヴォイ
ド・シェイパ』など、多作な作家である。
すべてがFになる (講談社文庫) | 森 博嗣 | 本 | Amazon.co.jp
スカイ・クロラ (中公文庫) | 森 博嗣 | 本 | Amazon.co.jp
仕事というと、「人間の大事な要素」と考えている人も少なくない。しかし本書ではそ
の考えは間違いだという。そのような考えは、古い考え方で人の価値が決まるのは人そ
れぞれだと筆者は指摘する。「国を動かす仕事」「未来を築く仕事」は「ゲームを作る
仕事」より「やりがい」があるのか。本書によるとこれは、言葉だけのイメージで錯覚
を植え付けているという。現代の若者は人目を気にしていると指摘する。
そうではなくて、「自分にとってどうなることが成功なのか」を見極める方が重要と筆
者は断言する。ネットの普及は、個人同士が結びつけた。人間の仕事は、だんだんスペ
シャルになっていくと指摘する。ジェネラルな仕事は、マニュアル化するという。世の
中の動きに敏感になるのだ。本当に楽しい物は、人に話す必要なんてない。楽しさが、
自分でよくわかるし幸せである。これが「やりがい」である。自分の働き方を見つめな
おし、「やりがい」を考えなおすよい機会となるだろう。